何年間も九段下と市谷の辺りは仕事で通っていたので、千鳥ヶ淵の桜は幾度となく見てきた。しかし、目と鼻の先の靖国神社に入ったことはなかった。
何かしらあまり行きたくない心理的機制があったからだが、今となっては靖国の桜を見なかったことを後悔する気持ちになっていた。
そこで、今年は、念願の靖国神社のお花見を決行する。
しかし、何といっても千鳥ヶ淵と共に、都内のお花見では超人気スポットである。
九段下駅からは、身動きできなくなる可能性があるので、市ヶ谷から歩くことにした。
地下鉄を降りて地上に出てくると、いきなり視界はソメイヨシノの花の渦に覆われる。
四方八方、道路脇は桜の並木が続いて、どこまでも伸びていくようだ。
人の往来も多いが、普通のペースで歩けるので、市ヶ谷駅で降りて正解だった。
かつて、この時期に、この道を何度か歩いているはずなのに、こんなにも見事に咲き乱れる桜の記憶が、全くと言っていいほどないのはどうしてだろうか。
おそらく、殆ど関心がなかったというより、忙しくて注意が向かなかった、としか言いようがない。
程なくして靖国神社に着くと、やはり多くの人たちでごった返していた。
優雅にお茶会も催されている。
それにしても、目を見張ったのは、ソメイヨシノの美しさと、庭園の佇まいの優美さだ。
歴史の重みを感じさせるような、見事な枝ぶり。
とても、軍国の桜のイメージとは程遠い、春を告げる優しいソメイヨシノの風情が漂っている。
この桜の樹は、気象庁が東京の桜の開花宣言をする際に、標本木としている靖国神社のソメイヨシノ。
たびたびニュース映像で見てきたが、本物を見るのは、勿論今日が初めてだ。
今年は、例年より早く、3月21日に開花宣言がなされたが、その後、寒さがぶり返して、都心の満開予測日の3月29日から随分とズレ込んだ。
ようやく満開を迎えた今日も、曇天の寒空で、標本木の桜も、どことなく憂いのある儚げな表情。
ここまで来たのだから、遊就館も見学する。
巷で騒がれているような極端な偏向はあまり感じることはなかった。
現代では到底受け入れられないような発想も含めて、様々な展示から、事実関係や動機の一端や考え方を知るのに、いい機会になると思う。
それをどう捉えるかは、自分の頭で判断すればいいだけだ。
お参りはとんでもなく長蛇の列になっているので、見送り。
続いて、千鳥ヶ淵へと向かうが、これは早めに横断歩道を渡ってしまって、大失敗だった。
満員電車のような押し合い圧し合いで、遅々としか進まない。外国人も多く、中国系、インド系の観光客が目立つ。
やっと辿り着くと、一方通行の歩行規制がされており、写真撮影も順番待ちで一苦労。
何とか、定番の千鳥ヶ淵緑道の入り口付近から、お壕のボート乗り場を望む絶景を撮ることができた。
本来なら桜並木が続く緑道を散策しながら、お壕の桜を愛でたいところだが、あんなに混雑していたら、ゆっくり味わうことは不可能だ。そして、交通整理のアナウンスでは、九段下駅の改札が混雑して、乗車もままならぬ様子である。
そこで、北の丸公園から竹橋駅に抜ける道を選択することにした。
田安門の手前付近 |
北の丸公園では、紅枝垂れ桜が見ごろとなっており、他にもは春を告げる種々の花々も咲いていた。
ショカッサイ |
珍しいオレンジ色のミツマタ |
煉瓦造りの東京国立近代美術館工芸館も見えてきた。
北の丸公園を出た辺りでも、紅枝垂れ桜が真っ盛り。
ソメイヨシノの満開が遅かったからか、そして、昔から多くの紅枝垂れ桜が植えられていたのか、お花見の時期に、これほど沢山の美しいシダレザクラが見られるとは思っていなかった。
竹橋駅付近でもこの通り。
季節の変わり目で、すぐ頭痛が起きてしまう曇天のお花見となったが、念願かなって満開の桜を堪能し、無事帰途に就く。
それにしても、この市谷から九段下界隈の、桜一色の風景には改めて驚かされた。
同時に、見物客の多さにも圧倒された。
わずか一週間に集中する桜のお花見シーズンの、今日のような花と人の洪水に呑まれたのは、生まれて初めてかもしれない。
海外からの観光客も激増して、観光バスもどんどん乗り入れてくる。
これからは、ゆっくり花を観賞できる穴場のお花見スポットも探してみたいと思う。
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