以前から気になっていた、斬新さと、ユーモラスな浮世絵で知られる、歌川国芳の展覧会に行ってきた。
開催されている練馬区立美術館は、西武池袋線の中村橋駅から3分。電車一本で自宅から30分もあれば着いてしまう。
「国芳イズム — 歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」では、チラシのデザインが3枚用意されており、主催者側の並々ならぬ意気込みが感じられる。
今回の展示会は、武蔵野の洋画家、悳(いさお)俊彦氏の浮世絵コレクションから、歌川国芳とその門人28名などの作品、約230点によって構成されている。
その最後のコーナーでは、悳俊彦氏の武蔵野の面影を描いた洋画作品も見ることができた。
歌川国芳は、もう何年も前から、各美術館や書籍で取り上げられている、江戸末期の人気の浮世絵師である。
今回、私も初めてその画を鑑賞して、いっぺんでファンになった。
江戸時代に、これだけ自由に、躍動感のある、そしてユーモアのセンス抜群の画を描く絵師がいたとは、驚きでもあった。
思わず、プッと吹き出してしまう擬人化した動物たちの絵や、漫画そのものである可笑し気な人物画などは、とにかく楽しい。
完全に、ツボに嵌ってしまった。
「流行 猫の狂言づくし」 |
「両面相 奇異上下見之図」 |
「其まま地口猫飼五十三疋(下)」 |
「流行 猫の曲手まり」 |
国芳の猫好きは有名な話である。
猫を懐に抱いて、浮世絵を描いていたとのこと。
版画なので、それほど大きな紙が使われているわけではない。
それを3枚継ぎ合わせるなどして、縦横無尽の歴史絵巻の、一大スぺクタルを表現したりもしている。
「相馬の古内裏」 |
「里すずめねぐらの仮宿」 |
今回の展示のテーマである「国芳イズム」とは、国芳の弟子たちはもとより、他の絵師たちの作品にとっても、如何に国芳という存在が大きかったか、その国芳がつくった幕末・明治以降の浮世絵界、風俗画界の一つの大きな潮流を言い表している。
「源頼光公館土蜘作妖怪図」 |
この「センスのない不格好な‟反骨”という言葉とは程遠く、制限の中で新しい表現を模索し、流行を牽引していくスマートな作画態度」という解説は、展示会の中で目に留まり、痛く気に入った箇所である。
国芳の作風の本質をピシャリと言い当てた、素晴らしい表現だと思う。
書いたのは、練馬区立美術館学芸員の加藤陽介氏であろう。全く浮世絵に素養のない私ではあるが、江戸文化や浮世絵の造詣の深さと洞察の確からしさに共感を覚えた。
つまり、江戸っ子が肩ひじ張らず、さらりとかわす「粋」がそこ息づいているのである。
私が江戸末期の浮世絵に惹かれる所以は、その辺りにありそうだ。
まだ、この改革で被害を被り、怒って妖怪となった江戸市中の人々の、化け物ぶりを面白がっているレベルではあるが。
浮世絵や江戸の庶民文化に対する関心が急速に高まってきた。
関連する本を図書館で借りたり購入したりして、しばらくは読書と展示会探しに没頭しそうだ。
美術館の外に出て、ふと見ると、壁を這う何ともアートな葉っぱ模様が目に留まる。
あちこちで葉っぱに目を奪われてしまう、要は、葉っぱ好きなのである。
帰りは、予め調べておいたカフェKUUTAMOで一休みする。
美術館とは駅の反対方向にあるが、歩いてわずかの距離。
小さなお店なので、歩いていて見落としてしまいそうだが、中に入ると、その小ささも含めて、立派な「今どき」のカフェだ。
パンケーキのセットを注文するが、そのボリュームに感激!
フルーツや、つぶあん添えのバニラアイスも付いて、お腹も十分満たされる。
ミントティーも、今まで飲んだ中で一番おいしかった。
練馬美術館にやってきた折には、またお邪魔することにしよう。
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