学生証を利用して行く美術館巡りも、残り10日となったところで、出光美術館と東京ステーションギャラリーとをハシゴする。
出光美術館の展示は、「勝川春章と肉筆美人画」。生誕290年記念の企画展である。
全く予備知識のない鑑賞であるが、艶やかな色彩も、精緻でしなやかな描画のタッチも、版画とは異なる、繊細な優美さに目を見張った。
まさに、雅〈みやび〉という言葉が浮かんでくる。
そして、美人画のモデルが主に遊女であり、遊郭に生きる女性たちと、その日常の生活風景が活き活きと描かれているのが、とても興味深い。
「読書美人図」、「遊女と達磨図」などを見ていると、単に春を売る商売女という最下層の女性への哀れみや蔑みを一蹴する、気品すら漂っている。
凛とした佇まいや、大らかさ、ユーモアもあって、寧ろ、絵のモチーフとしたくなるほどの、美しきものへの憧憬や親密感を感じ取ることができる。
「文読む遊女図」 「梅下美人図」 |
遊女と達磨図(太田記念美術館所蔵) |
勝川勝春の弟子には、かの葛飾北斎がいる。
聖と俗が親和的な、江戸の庶民文化の豊かさ、拡がり、底力の一端に触れたような気がする。
出光美術館を後にして、次は東京ステーションギャラリーへと向かう。
その道すがら、三菱一号館ビルの前を通った。先日は雨で急ぎ足で帰ったので、建物の全体像を仰ぎ見ることはなかった。
やはり復元とはいえ、歴史的建造物としての重厚さが漂う。
近代建築の草創期を象徴する建物と、現代の高層ビル建築とのマッチングが素晴らしい。
通り道にある東京ビル一階のカフェ、VIRON。
本当はここで一休みしたかったが、今日は時間がないので、今回は素通り。
東京ステーションギャラリーは、東京駅の北口に位置する。
天井の高窓からは、明るい光が差し込んで、美しいドームの装飾を引き立たせている。
大正3年に建造された赤煉瓦の東京駅舎は、三菱一号館や鹿鳴館などを設計したジョサイア・コンドルの弟子、辰野金吾の作品である。
空襲で3階部分が焼失した後、2階建てとして修復され使用されてきたが、4年ほど前に完了した復原工事では、その3階部分とドームも元の形に再建され、大いに話題になったそうである。
東京ステーションギャラリーでは、重要文化財に指定された、当時の東京駅の赤煉瓦が使用されている。
本当に終わりのないヴァリエーションである。
すべて静物画の1.2.3・・・40と続く。例えば、この静物画がいいと人に伝えるとき、どう説明すればいいのか?と、はたと考えてしまった。番号以外で言い表しようがないのである。
その中で、いくつかの気に入った作品も見つかった。
随分と駆け足に美術鑑賞して回ったが、インスピレーションを得て、新たな興味も湧いてきた。
今後、いろいろ調べたり、関連本を読むことによって、作品の背景や歴史上の位置づけをしながら、今回の鑑賞作品の意味を深めたい。
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