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2016年4月18日月曜日

新緑の六義園


六義園と言えば、大きな枝垂桜で有名な、都内でも有数の名庭園、国指定の特別名勝である。

しかし、かつて目の前の文京グリーンコートに3年余り通っていたのにも拘わらず、通勤途中に外壁を眺めるだけで一度も中に入ることはなかった。

今回、敢えて混雑する桜の時期を避けて、新緑の季節に訪ずれてみた。

まず、内庭大門をくぐると、いきなり六義園のシンボルツリーである枝垂れ桜が目の前に迫る。

すっかり桜の花は散り、美しい新緑の華を咲かせていた。

形の整った楯15m横幅20mの枝垂れ桜は、荘厳で迫力があり、来年こそは満開の時期を目指してやってこようと思った。

桜と共に六義園は、ツツジの名所でもある。
季節になると、JR駒込駅のホームに面する色鮮やかなツツジがひときは目をひくが、それも六義園に因んだものらしい。
キリシマツツジ

六義園は、真ん中の池の周りには、茶亭や橋、綺麗に剪定されたツツジや形の良い松の木、桜、楓に、岩や灯篭、島の配置など、美しい日本庭園の様式美を回遊しながら愛でるという、典型的な大名庭園である。

そして、小高い丘(山)から池を見下ろし、その後ろ側にも水を引いた渓流と、数多くの楓や様々な木々をふんだんに配するという、それは手の込んだ贅沢な造りになっている。




まずは、裏手の新緑の木々。楓の数が非常に多い。


楓の赤い花





見上げるほどの大きなヤマツツジ


花車

雄躑躅(オンツツジ)

六義園でここまで新緑を堪能できるとは、意想外の喜び。
滝見茶屋

次は、メインの池・大泉水を臨む周りの景観。



渡月橋





ツツジはこれからが見ごろではあるが、新緑とのコントラストがとても美しかった。
ピンク色のグラデーションが美しい飛鳥川


閉園間際になって、庭園内を眺望する藤代峠にたどり着く。

吹上茶屋のボタン

六義園は、木々の高さと伝統の日本情趣とに、自ずと古い歴史が感じられる。想像以上に緑が豊富で奥行きがあり、何度でも来たくなる、美しく重厚な庭園だった。


元禄8年(1695年)、五代将軍・徳川綱吉から与えられたこの地に、柳沢吉保が、7年の歳月をかけて「回遊式築山泉水(かいゆうしきつきやませんすい)庭園」を造りました。ここは平坦な武蔵野の一隅だったので、庭を造るにあたり池を掘り、山を築き、千川上水の水を引いて大泉水にしました。
六義園は吉保の文学的造詣の深さを反映し、和歌の趣味を基調とした繊細で温和な日本庭園になっています。庭園の名称は、中国の古い漢詩集である「毛詩」に記されている「誌の六義」すなわち風、賦、比、興、雅、頌という六つの分類法の流れを汲んだ和歌の六体に由来します。  庭園は中の島を有する大泉水を樹林が取り囲み、万葉集や古今和歌集に詠まれた紀州(現在の和歌山県)の和歌の浦の景色を始め、その周辺の景勝地や中国の故事にちなんだ景観が映し出されています。
庭園は明治時代に入って三菱の創業者である岩崎家の所有となり、昭和13年に東京市に寄付されて一般公開されました。なお、昭和28年3月31日に国の特別名勝に指定されました。(東京都建設局HPより)



 
六義園パンフレット



2016年4月13日水曜日

石神井池・三宝寺池の新緑


眩い新緑の季節の始まり。

今年の新緑巡りのスタートは、石神井公園の散策から。
ボート乗り場のある石神井池と、武蔵野三大湧水池の一つである三宝寺池の二つの池を周回する。

まずは手前の石神井池の新緑。

柔らかな若葉の黄緑色が目に沁みる。

沿道のお洒落なレストラン。残念ながら定休日だった。

民家のひときは目を引く赤いシャクナゲの花。

以下、石神井池の新緑の風景。




水辺の休憩中のカモ


三宝寺池に入っていくと、更に萌える新緑に包まれて、思わず深呼吸をせずにはいられない。



この辺りから、木道に沿って池の周りを歩いて行く。

盛りを迎える一重のヤマブキ

清々しい水辺の風景



橋を渡って・・・




三宝寺池エリアはこの辺りでお終い。

再び石神井池に戻る。

マルバアキグミ


スタート地点のボート乗り場から見えた、対岸のチューリップの花壇。ここで終着。



陽光に包まれた、石神井公園の美しい新緑を満喫して、とても気持ちの良いひと時を過ごすことができた。


帰りは元町珈琲で一服。至福のひと時なり。


石神井公園


元町珈琲









2016年4月10日日曜日

練馬区立美術館 「国芳イズム — 歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」 ~KUUTAMO


以前から気になっていた、斬新さと、ユーモラスな浮世絵で知られる、歌川国芳の展覧会に行ってきた。

開催されている練馬区立美術館は、西武池袋線の中村橋駅から3分。電車一本で自宅から30分もあれば着いてしまう。

「国芳イズム — 歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」では、チラシのデザインが3枚用意されており、主催者側の並々ならぬ意気込みが感じられる。




今回の展示会は、武蔵野の洋画家悳(いさお)俊彦の浮世絵コレクションから、歌川国芳とその門人28名などの作品、約230点によって構成されている。
その最後のコーナーでは、悳俊彦氏の武蔵野の面影を描いた洋画作品も見ることができた。

歌川国芳は、もう何年も前から、各美術館や書籍で取り上げられている、江戸末期の人気の浮世絵師である。
今回、私も初めてその画を鑑賞して、いっぺんでファンになった。

江戸時代に、これだけ自由に、躍動感のある、そしてユーモアのセンス抜群の画を描く絵師がいたとは、驚きでもあった。

思わず、プッと吹き出してしまう擬人化した動物たちの絵や、漫画そのものである可笑し気な人物画などは、とにかく楽しい。
完全に、ツボに嵌ってしまった。


「流行 猫の狂言づくし」

「両面相 奇異上下見之図」

「其まま地口猫飼五十三疋(下)」

「流行 猫の曲手まり」

国芳の猫好きは有名な話である。
猫を懐に抱いて、浮世絵を描いていたとのこと。

版画なので、それほど大きな紙が使われているわけではない。
それを3枚継ぎ合わせるなどして、縦横無尽の歴史絵巻の、一大スぺクタルを表現したりもしている。

「相馬の古内裏」


私が特に気に入ったのは、「里すずめねぐらの仮宿」である。
「里すずめねぐらの仮宿」


「天保の改革で、遊女の美人画が禁止されていた頃。吉原が火災に遭い、仮宅(仮の営業)となる。吉原の事に精通した人を吉原すずめと呼ぶそうで、仮宿(仮宅)の中の様子をすずめに模して描いている。それぞれの表情やしぐさがあり、遊客、物売り、客引き、遊女、新造、などなどに区別が付けられて表現されているところが素晴らしい。」(「国芳イズム — 歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」悳俊彦、加藤陽介監修、青幻舎. 作品解説より要約


今回の展示のテーマである「国芳イズム」とは、国芳の弟子たちはもとより、他の絵師たちの作品にとっても、如何に国芳という存在が大きかったか、その国芳がつくった幕末・明治以降の浮世絵界、風俗画界の一つの大きな潮流を言い表している。

「源頼光公館土蜘作妖怪図」
「国芳の活躍した時期にちょうど天保の改革の真っ只中で、奢侈禁止、役者や美人の絵には制限がかけられた。《源頼光公館土蜘作妖怪図》は改革を批判した絵として、しばしば‟反骨”の絵師と評される。しかし、これも江戸っ子としての当然の揶揄をしているまでで、センスのない不格好な‟反骨”という言葉とは程遠く、制限の中で新しい表現を模索し、流行を牽引していくスマートな作画態度であった。」(同上より引用)

この「センスのない不格好な‟反骨”という言葉とは程遠く、制限の中で新しい表現を模索し、流行を牽引していくスマートな作画態度」という解説は、展示会の中で目に留まり、痛く気に入った箇所である。
国芳の作風の本質をピシャリと言い当てた、素晴らしい表現だと思う。
書いたのは、練馬区立美術館学芸員の加藤陽介氏であろう。全く浮世絵に素養のない私ではあるが、江戸文化や浮世絵の造詣の深さと洞察の確からしさに共感を覚えた。
つまり、江戸っ子が肩ひじ張らず、さらりとかわす「粋」がそこ息づいているのである。
私が江戸末期の浮世絵に惹かれる所以は、その辺りにありそうだ。
まだ、この改革で被害を被り、怒って妖怪となった江戸市中の人々の、化け物ぶりを面白がっているレベルではあるが。

浮世絵や江戸の庶民文化に対する関心が急速に高まってきた。
関連する本を図書館で借りたり購入したりして、しばらくは読書と展示会探しに没頭しそうだ。

美術館の外に出て、ふと見ると、壁を這う何ともアートな葉っぱ模様が目に留まる。
あちこちで葉っぱに目を奪われてしまう、要は、葉っぱ好きなのである。


帰りは、予め調べておいたカフェKUUTAMOで一休みする。
美術館とは駅の反対方向にあるが、歩いてわずかの距離。


小さなお店なので、歩いていて見落としてしまいそうだが、中に入ると、その小ささも含めて、立派な「今どき」のカフェだ。

パンケーキのセットを注文するが、そのボリュームに感激!

フルーツや、つぶあん添えのバニラアイスも付いて、お腹も十分満たされる。
ミントティーも、今まで飲んだ中で一番おいしかった。

練馬美術館にやってきた折には、またお邪魔することにしよう。